2011年リリース
素朴だけれど、力強い。このアルバムを聴いていると、毛利元就の3本の矢の話を思い出す。ご存じのように、1本だと簡単に折れる矢が3本束になるとなかなか折れない、という内容だ。このアルバムには3つの特徴がある。何にでも溶けてしまうような中性的なヴォーカル、懐かしくクセのあるメロディー、メロディーにぴったり寄り添うアレンジ。この3つの特徴が、アルバム全体を血液のように循環している。目に見えるようなはっきりとした印象としては、素朴だ。しかし、この3つの特徴により、同時に力強さも感じてしまう。
(画像はAmazonより)
このアルバムの制作に関して、難産だったと本人が語っていた。制作当時は震災も重なって、ナーヴァスになった時期もあったようだ。メロディーの並べ方は、彼なりのクセがあり、既存のポップスとは一線を画している。そのクセと感じる部分を生み出しているのは、努力の結晶なのかもしれない。それは難産だったことを語っているとき、彼が選択する言葉から感じたことだ。クセを生み出す努力が、メロディ・メイカーとしての彼の大いなる武器と言える。
ライヴのチケットは各会場でソールド・アウト。このアルバムを聴けば、その事実に誰もが納得するはずだ。名盤に一番近い存在。
(松本 良太)
収録曲
1. エピソード
2. 湯気
3. 変わらないまま
4. くだらないの中に
5. 布団
6. バイト
7. 営業
8. ステップ
9. 未来
10. 喧嘩
11. ストーブ
12. 日常
13. 予想