異色の対談が実現
2012年1月20日放送の『僕らの音楽』で、珍しい対談が実現した。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのギター&ヴォーカル後藤正文と、AKB48プロデューサーの秋元康という異色の組み合わせ。テレビや雑誌等では対談企画も数多くある中で、この対談は『僕らの音楽』らしいキャステイングだ。音楽をエンターテイメントとして捉える者と、音楽を生活の一部、もしくはアイデンティティとして捉える者が、お互いの考えを伝え合う姿は、実に清々しいものだった。
(画像はASIAN KUNG-FU GENERATIONより)
後藤はテレビに出ない理由をいくつか挙げる。サウンド面で納得がいかないこと、音楽番組がバラエティ化していることなどを、慎重に言葉を選びながら語る。一方、秋元はどんなひどいスピーカーでも多くの人に良いと思ってもらえる、それがメジャーだと熱弁する。曲を作るときに、一番小さいラジカセで聴いて判断して、GOサインが出せるようなタフなエンターテイメントが自分のやりたいことだと語る。ほかにも、AKBがCDに総選挙の投票券を付けた理由を秋元が語ったり、「売り上げを意識するか」というテーマについて、お互いの考えを語り合う。売り上げを少しは意識するという後藤に対し、秋元はヒット曲を作ることこそが使命だと語る。ヒット曲があるからバラエティやドラマに呼んでもらえるのであり、ヒット曲の存在がなければメンバーは次の目標に向かえない。ヒット曲はプロデューサーとしての責任だと明言した。最後はファンの話になり、秋元が「10人の厳しいファンが、90人の優しいファンを連れてきてくれる」と語ると、後藤もそのことについて理解を示していた。
非難も大事に
この対談には、一部のロック・ファンから非難の声が上がっていたという。そのことについて懸念する後藤。しかし秋元は、そういうファンこそ大事にするべきと主張した。アーティスト側とプロデューサー側の意識の違いも、この対談の見所の一つであったに違いない。お互いの主戦場は異なるが、両者とも自分にはない視点からの意見により、良い刺激を受けていたようだ。この刺激が作品に反映されることを期待したい。
(松本 良太)
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