2011年リリース
このアルバムを語るときに、どうしても素通りできないことがある。それは、2011年3月11日だ。畠山美由紀は、宮城県気仙沼市の出身。震災により、家族とも連絡が取れない時間を過ごした一人だ。テレビから流れる映像でも、想像を絶するような光景の連続で、住民や被災地が故郷である人々の気持ちを、被災地以外の人が完全に理解することは難しい。
(画像はAmazonより)
このアルバムに収められた、“わが美しき故郷よ”の朗読。この詩には、郷愁と苦悩、そしてこれから先の道標が渾身の言葉で綴られている。方言を交えての朗読を聴いていると、言葉では到底説明できないような気持ちになる。普段は誰もノックしない、心の奥深くにあるドアをそっと叩き、何かを置いていく。それが何なのかは、この朗読を聴いた人自身に委ねられている。朗読の後に収録された同タイトルの曲には、懐かしい思い出の中に未来への希望が込められている。
彼女の凛とした歌声は、明日への活力になる。震災直後、「音楽は本当に必要なのだろうか?」という疑問を感じた人は多いはず。確かに、自衛隊やレスキュー隊のように直接必要とされるものではないかもしれない。しかし、混乱が収束してある程度の落ち着きを取り戻しつつある今、音楽は必要とされるもの。畠山美由紀は、その代弁者だ。
(松本 良太)
収録曲
1. その町の名前は
2. 風の吹くまま
3. What A Wonderful World
4. Moon River
5. わが美しき故郷よ(詩の朗読)
6. わが美しき故郷よ
7. 教えて,ママ
8. Over The Rainbow
9. 浜辺の歌
10. 花の夜舟
11. Untitled
12. ふるさと
畠山美由紀 オフィシャルサイト