旅に生きる生活
日本人初のノーベル文学賞受賞者、川端康成によって書かれた名作『伊豆の踊子』は1926年の1月から2月にかけて、雑誌『文芸時代』に発表された。84年前のちょうどこの時期といったところだ。
今更説明するまでもないと思われるが、作品中には重要な登場人物として旅芸人の一座が登場する。ひとつところに留まることなく旅の中に人生を見出すという、一見孤独にも思える日々。しかしそれは同時に一期一会の出会いの日々でもあり、伊豆の踊り子同様、そういった様々な出会いと別れが芸の質を高めてゆくのは間違いないであろう。
現代の旅芸人、やなぎ
前置きが長くなってしまったが、言わば現代の旅芸人とでも呼べるミュージシャンをご紹介したいと思う。
岩手県在住、1年の大半を旅に費やし全国各地で歌い続ける、やなぎ氏がそれだ。
ブルース、カントリー、フォークミュージックに影響を受けたであろう彼の歌には、人となり同様に自然で気取ったところがなく、各地にファンも多い。それらジャンルの歌には日常生活を題材にしたものが多いのだが、旅暮らしから生まれた歌には彼にしかない、独自の世界観があるようにも感じる。
1月末から始まる、長い旅暮らしとなるツアーに備えて現在は準備中のやなぎ氏。もしも機会があればぜひとも一度、彼の歌を聞いてみて欲しい。出来れば発売されているCDではなく、近くの会場で生の歌声を。なぜならそれが旅芸人の真骨頂でもあり、彼の歌のタイトル通り、最も『旅という生活 生活という旅』を直に感じる事が出来るからだ。
『伊豆の踊り子』のように旅には出られないけれど、現在の仕事や生活にどこか息苦しさを感じて疲れているのなら。岩手からの歌声は、あなたの心をきっとリラックスさせてくれることだろう。
2010年やなぎライブスケジュール(公式HPより)Everyday I have the BLUES(やなぎ公式HP)