ロシア構成主義アートを意識したジャケットデザインが印象的なクラフトワークのアルバム「人間解体」(画像はAmazon.co.jpより)
日本において、テクノという言葉をポピュラーなものにしたイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)。そして彼らのコンセプトに影響を与えた存在の一つ、ドイツのクラフトワーク。この2組がついに共演を果たすこととなった。
テクノミュージックのパイオニア
ドイツのデュッセルドルフで結成されたクラフトワークは、シンセサイザーを全面的に駆使した1974年のアルバム『アウトバーン』のヒットにより一躍世界的知名度を獲得。続くアルバム『ヨーロッパ特急』『人間解体』で、初期のジャーマンプログレとは違った彼ら特有の無機質なミニマルミュージックを確立し、その後のテクノミュージックやトリップミュージックのみならず、ヒップホップやクラブミュージックにも多大な影響を及ぼしたのが彼らである。
日本中を席巻、世界でも活躍
細野晴臣は、このクラフトワークら電子音楽からのインスパイアもあって、それまでのロックやソウルミュージックから一転、コンピューターによる寸分狂わぬリズムシーケンスを軸にした、日本発ワールドミュージックという着想を得る。そして、クラシックや実験音楽からポップミュージックまで幅広い音楽的素養を持つ坂本龍一と、若くからプロデビューし、サディスティックミカバンドで既に英国ツアーなども経験していた高橋幸宏を誘い、YMOを結成。セカンドアルバム『ソリッド・ステイト・サバイバー』の大ヒットを皮切りに、日本にテクノブームを巻き起こし、さらにワールドツアーも敢行するなど、世界に名を馳せる存在となっていった。
一家に一枚YMOとまで言われた大ヒット作「ソリッド・ステイト・サバイバー」(画像はAmazon.co.jpより)
1983年にその活動を一旦終了したYMOだったが、2004年頃から再び3人での音楽活動の機会が増え始め、やがて「もはや、この3人が集まった時はYMOと思ってもらって構わない」(坂本龍一)と自認するようになり、今日に到っている。
第一期YMOの最高傑作との呼び声も高いアルバム「テクノデリック」
(画像はAmazon.co.jpより)
「NO NUKES 2012」に両者が出演
このクラフトワークとYMOは、互いにその存在を認識し、音楽性を認めながらも、意外なことにこれまで全く共作や共演をすることはなかった。しかし、来る7月7日、8日に幕張メッセで開催される、脱原発をテーマとした音楽イベント「NO NUKES 2012」にクラフトワークの出演が決定。これは同イベントをオーガナイズする坂本龍一が4月、ニューヨークでクラフトワークの2人にオファーしたことによるもので、これにより、ついにYMOとクラフトワークの2組のパフォーマンスが、ここ日本で一度に両方観られることとなったわけだ。自身の音楽を常に進歩させ続けてきた両者がどのようなステージを見せてくれるのか、楽しみである。
NO NUKES 2012 公式サイトymo.org(YMO公式サイト)kraftwerk.com(クラフトワーク公式サイト)