5月12日(土)METAMORPHOSE SPRING 12@幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
(画像提供:metamorphose office/photo by 青木勇策)
昨年は、台風の影響により、開催中止となってしまった
METAMORPHOSE 2011。今年は
METAMORPHOSE SPRING 12として、幕張メッセ国際展示場にて開催されることに。ラインナップには、ヘッド・ライナーの
ザ・フレーミング・リップスと、8年ぶりとなる最新作
『Wonky』を発表し、完全復活を遂げた
オービタル。そして、ダブ界の第一人者である
エイドリアン・シャーウッドや、元アンダー・ワールドの
ダレン・エマーソンと
ティム・デラックスが、DJ師弟対決という、なんともゴージャスなメンツが勢揃い!
いつもの事ながら、タイム・テーブルを確認!今回、
Jupiter Stage (ライブステージ)と、
Sirius Stage (DJステージ)の2ブース構成。
Jupiter Stageが10時開演で21時終了のライブステージで、
Sirius Stageは、10時開演でオールナイト公演である。かなり悩んだ末、やはり翌日の朝まで会場にいること決意し、少し遅めに幕張メッセに到着。
(画像提供:metamorphose office/photo by Ryo Nakajima (SyncThings) )
早速、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールへと向かう。入口である10番ホールから入場し、
オービタルのステージを観賞するため、
Jupiter Stageがある9番ホールに入場!今年の3月に8年ぶりとなる最新作
『Wonky』をリリース!彼ら特有のキラキラとしたメロディックな楽曲から、ダブステップの要素も取り入れた楽曲などが収録されており、懐かしさと新しさを感じ取ることができる内容で、まさに
「おかえりなさい!」と言ってしまいたくなるほどの最高傑作だ。2010年のサマソニ以来、約2年ぶりに彼等のステージを堪能できるとあって、期待に胸を膨らませながら、最前列でライブを観賞することにする。ステージ上では、機材などのセッティングが開始され、次々と設置されていく。
(画像提供:metamorphose office/photo by 青木勇策 )
ここで気になったのが、機材の前に三角形の大きなLEDモニターが設置されたのだが、今迄、
オービタルのステージで、こういったLEDモニターが設置されたことはなかった。一体、どんなステージを披露してくれるのか期待感が募り出す。そして、開演予定時間から、10分程過ぎた頃、会場内の照明が暗転!遂にステージに、
オービタルの
フィルと
ポール兄弟が電飾メガネを装着し登場!会場内が大歓声に包まれ、1曲目の
「One Big Moment」の楽曲がスタート!キラキラと輝きを放つメロディーが流れだす。
この恍惚とするような、エレクトロ・サウンドは、
オービタルだけが、創りだせるのだ。
「これだ!これが、オービタルだ!」と心で呟きながら、時折、やってくる重低音のバランスの見事さを堪能し、強い安定感を感じる。
「Halcyon」と
ベリンダ・ カーライルの
「Heaven Is a Place on Earth」をサンプリングした楽曲を披露!この
「Heaven Is a Place on Earth」サンプリングは、確か2010年のサマソニでも流れたが、
「Halcyon」とのサンプリングではなかったはずなので、最近のバージョンなのだと思いながら、次の楽曲
「Straight Sun」へと引き継がれていく。不安げな電子音から、徐々に切なさへと変化していく繊細なサウンドで、会場内が強い高揚感で満たされていった。
(画像提供:metamorphose office/photo by Ryo Nakajima (SyncThings))
それにしても、今回のLIVEセットで驚いたのは、ライティングとVJだ。
オービタルのサウンドとバック・スクリーンに映し出される映像が融合し、聴覚と 視覚の両方を刺激!映像は、まるで万華鏡でも覗いているような感覚なのだ。音楽だけでなく、映像に興味がある人にも見て欲しいと思えるくらいの演出だ。
早くも大ベテランの貫禄を感じつつ、ライブの半ば、流れた楽曲は
「Never」。最新作
『Wonky』の発売前から、プロモビデオで先行公開されていた楽曲である。
オービタルの一番得意とするピュアなテクノサウンドだ。どこか懐かしく、キラキラとした電子音に心地よさを覚える。そして過去の名曲
「Belfast」からの
「Impact」に不意打ちを食らう。この楽曲を待っていたファンも多く、会場内が大歓声とともに、激しい熱気で覆われていく。 個人的には
「Impact」が聴けないライブは、ちょっと想像できない。この楽曲には、そのくらいの存在感があると思っている。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
そして、ライブ後半は、最新作と同タイトルの
「Wonky」の演奏が始まった。初めてこの楽曲を生で聴いたが、ライブ栄えするアレンジで、挑戦的なサウンドに魅了されながら
「Are we here」のピュアでハッピーなメロディーに心も身体も弾み、さらに
「Stringy Acid」や、彼等の代表曲
「Chime」の繊細さに心を奪われる。そして、ラストに
「Where Is It Going」の疾走感と攻撃性も兼ね備えたナンバーを披露しステージが終了!
オービタルの
ハートノル兄弟が笑顔でステージを去っていく。会場内が、大歓声と大きな拍手で包まれていた。終始、幸福感で満たされた貫禄溢れる圧巻のパフォーマンスを体感させてくれた。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
お次は、UKダブ界の奇才、
エイドリアン・シャーウッドのステージを観賞するため、
Sirius Stageへ移動。しかし、完全に
オービタルで舞い上がりすぎてしまった筆者。自身の身体に筋肉痛が進行し始めていた。ぎこちない歩き方で、
Sirius Stageに到着。ギリギリで、
エイドリアン・シャーウッドのプレイに間に合う。
Sirius Stageは、どこか時間の流れが、
Jupiter Stageとは違ってみえた。それはきっと、
エイドリアン・シャーウッドのサウンドがそうさせたのだ。UKレゲエ、ダブ・レーベル、
ON-U SOUND主宰でもある彼は、80年代のUKミュージックシーンに多大な影響を与えた人物である。以前、「ダブって何?」と聞かれて、詳しい知人と議論してみたが、結局「聴いてみないとわからないよね?」という結論になったのを思い出しながら、彼のプレイに酔いしれる。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
ダブが持つ特徴的な緩いテンポに、
オーディエンスがゆらゆらとゆったり、リズムに合せて踊り出す。レゲエの要素に、ジャズサウンドをミックスして、そこにダブの重低音を重ね合わせ、ビリビリと適度に振動させ、不思議な空間を創り上げていた。しばらく、まったりとタブサウンドを満喫。本当は最後まで、ダブサウンドを堪能したいところであったが、
ザ・フレーミング・リップスのステージのライブを観賞するため、
Jupiter Stageへと移動。
83年から活動している、大ベテランのオルタナティヴ・ロックバンド。長期に亘るインディーズからのリリースを経て、92年にメジャー・デビューを果たす。商業性よりも、実験的な音楽に挑戦し続け、2003年にはグラミー賞の
「ベスト・ロック・インストゥメンタル・パフォーマンス賞」を受賞し、ミュージシャンやメディアからの評価も高いバンドである。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
会場内に入場すると、
オーディエンスの大歓声と、ステージにあるアーチ型のバック・スクリーンに映し出される映像が、強烈な印象を放つ。そして
「What Is the Light?」の演奏が始まり、アーチ型のバック・スクリーンに歌詞が白い文字で映し出され、オーディエンスが、それに合わせて歌い上げる。スローテンポのリズムとグルーヴィーで、オーケストラの要素も感じさせるサウンドで、優しくじわりと心に響いてくる名曲だ。それから
「The Observer」という、力強くて切ないギターサウンドに陶酔してしまった。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
ラストは
「Do You Realize??」を披露!演奏の前に、ボーカルの
ウェインが
オーディエンスへ挨拶してから、演奏が始められたが、
ウェインが
「カモン!カモン!カモン!」とオーディエンスを煽る姿が、なんとも微笑ましかった。そして冒頭の
「Do You Realize~」とゆっくり、気持ちをため込むように歌い上げると、アーチ型のバック・スクリーンに
「1,2,3,4」のカウントが表示され、ステージの 両サイドから大量の紙吹雪が舞い上がり、キラキラと輝きながら、会場中に降り注ぐ。会場内が大歓声で包まれ、ステージに向かって皆が両手を上げていた。胸に迫るような切なさと、同時に幸福感に浸れるサウンドでラストを飾ってくれた。ステージから、メンバーが去ったあとも、会場中から、アンコールを煽る拍手が鳴り止まなかった。実際、アンコールはなかったが、それに応えるように
ウェインが、何度もステージに登場し、オーディエンスに丁寧にお礼をして、ステージを降りていった。
ここで、
Jupiter Stageでのライブアクトは、全て終了し、
Sirius Stageへと向う。
Sirius Stageはオールナイト公演。デトロイトの重鎮
デリック・メイのDJプレイも気になったのだが、
オービタルから、休憩なしでステージを観賞していたため、さすがに体力も尽きてきた。今回、AM1:50~4:20の予定で、
ダレンと
ティムの、3時間弱のDJ師弟対決も控えているため、休息をとることにした。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
それぞれ、会場の床に寝ころんでいる人もいれば、踊っている人、会場内の外廊下のフロアにある、休憩スペースで休んでいる人もいた。一旦、会場の外廊下の椅子に座って、食事と仮眠をとろうと思ったが、思うように眠れず、再び
Sirius Stageへ入場!
デリック・メイが、デトロイト・サウンドでフロアを興奮させていた。この時、となりのHMVのブースでサイン会が行われており、先ほどヘッド・ライナーを務めた、
リップスの
ウェインが、ファンのサインに応じていたが、遠くで見ても、近くで見ても、彼のヘアスタイルはモジャモジャであった。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
筋肉痛も酷くなってしまい、こまめに休憩を入れながら過ごす。そして、予定時間を30分ほど過ぎたころ、ようやく
Sirius Stageに
ダレンと
ティムが登場!彼等のDJ対決を待ち望んでいた人も多く、会場内から拍手と歓声が沸き上がる。ご存じ、元アンダー・ワールドのメンバーで、名曲
「Born Slippy」の生みの親である
ダレン・エマーソンと、
ティム・デラックスのDJ師弟対決だ。
ティムは、自主レーベルで作品をリリースしていた時に、
ダレンに見出され、
ダレンが主宰するレーベル
Underwater Recordsから作品をリリースし、その翌年に
「I Just Won’t Do」が世界中で大ヒット!そんな師弟関係の2人がDJプレイを披露してくれるというわけだが、DJプレイ開始から、特に
ティムのテンションが高く、はしゃぎながらプレイをする。それを優しく見守りながら、きっちり仕事をする
ダレン。
(画像提供:metamorphose office/photo by 井口忠正)
しかし、3時間ほどの長丁場のため、途中で
ティムがバックステージに戻るなど、かなり自由な雰囲気で進行していく。
ティムがいない間も、
ダレン師匠が会場内を盛り上げる。対決というより、2人とも仲良くDJプレイをしていて、観ているこっちまで、ハッピーな気持ちになるほど、2人が、息の合ったDJプレイを見せつける。
(画像提供:metamorphose office/photo by 青木勇策)
そして、
ティムが
「Freedom」をプレイした後、
ダレンが
「Dark&Long」を速攻でプレイしたのも印象的だった。
ダレンのDJを観たのは、本当に久しぶりであったが、大ベテランの安定したプレイに、素直に身を任せ楽しむことが出来た。そして、流れるようにテクノとハウスのサウンドでDJ対決が続けられ、3時間ほどのDJ対決が終了!
オーディエンスの拍手と歓声に包まれて、
ダレンと
ティムがステージを降りて行った。
それにしても、
オービタルや
リップスといい、大ベテラン勢の熟練したパフォーマンスを、一夜にして堪能することが出来た。幕張の美しい朝焼けと、心地いい疲労感を感じながら、幕張メッセを後にした。
「METAMORPHOSE SPRING 12」